シス・カンパニー公演 ベッジ・パードン
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   文豪・夏目漱石が、明治政府からの命を受け、文部省第1回給費留学生として、英国・ロンドンへと旅立ったのは、明治33年(1900年)のこと。出発直前まで、熊本第五高等学校(現・熊本大学)で教鞭をとっていた漱石(本 名:金之助)は、この時すでに33歳。身重の妻・鏡子と幼子を残しての2年間の単身留学は、大きなカルチャーギャップと生来の神経症的な性質もあいまって苛酷極まりないものであった・・・・・・、というのが文学史上の定説です。後にその暮らしを、「倫敦に住み暮らしたる二年は尤も不愉快の二年なり。余は英国紳士の間にあって狼群に伍する一匹のむく犬の如く、あわれなる生活を営みたり」(「文学論」序)と記しているように、この定説は、漱石が書き残した文章や後年発表した作品群はもちろんのこと、日本にいる妻や友人らに宛てた手紙や日記などから読み取れる心の動きへの考察が、その根拠になっています。しかし、ロンドンで神経を病んだと言われている"のちの文豪"漱石ですが、実際のロンドンの市井の人々とどのような人間関係を育み、どのような暮らしを送っていたのかは、彼がロンドン滞在中に残した文章の中に、まだまだ私たちの想像力を強く刺激するエピソードを見つけることができるのです。

 細かく当時の日記や手紙を読んでみると、そこには、下宿の使用人である<ベッジ・パードン>なる女性の名前が度々登場しています。しかも、他の記述が単なるメモのようであったり、西洋社会や外側から見た日本への論評口調も多く見受けられるのに対し、彼女や下宿での人々とのやりとりの記述には、のちの人気小説にも通じる、どこか軽妙で微笑ましい人物描写が見られます。例えば、<ベッジ・パードン>という名前は、本名ではなく、どうやら漱石が付けた呼び名らしいこと、その由来は、彼女が相手の言葉を聞き返すフレーズ “I beg your pardon? アイ・ベッグ・ユア・パードン? 失礼ですが?”が、彼女のキツイ訛りと舌足らずな発音のせいで、“ベッジ・パードン”と響き、この呼び名になったこと。
そして、ある日の友人に宛てた手紙には、“なんだか解らなかったけど、ベッジが猛烈に喋り出して、あまりに解らないから笑ったら、話が面白くて笑ったと思ったらしく、益々猛烈に喋り出した・・・”という意味合いの描写も見受けられます。そんな“のちの文豪”が過ごしたロンドンでの“ベッジ・パードンとの日々”に、本年“生誕50年”を迎える人気劇作家・演出家:三谷幸喜が着目! その独創的な視点から自由に“三谷ワールド”を羽ばたかせた新作を携え、シス・カンパニーとの初めてのコラボレーションが実現することになりました。“生誕50年・三谷幸喜大感謝祭”と銘打った壮大な企画の第3弾としても、初のシス・カンパニー公演への登場を記念する作品としても、注目必至の新作です!

 出演にも、演劇ファンならずとも、思わずそのキャスト名に見入ってしまう顔ぶれが揃いました。
 まず、全くの新作現代劇は初めての出演となる狂言師・野村萬斎。
 狂言以外の演劇では、ギリシャ悲劇やシェイクスピア劇での様式美の中での存在感が印象深い野村が、本場英国のフロックコートに身を包み、“のちの文豪”漱石を演じます。
 この<萬斎=漱石>誕生の経緯については、「三谷幸喜大感謝祭」発表会見で三谷自身がこう明かしています。
『「萬斎で現代劇を!」とシス・カンパニープロデューサーから依頼を受けたとき、“背広姿の萬斎さん”の良い意味での違和感。現代人なのに、どこか現代人っぽくなく、現代の生活に馴染みきれないような不思議な雰囲気を、どうすれば生かせるのかと悩み、思いついたのが英国留学時代の夏目漱石だった』 と。 その着想と、実在の“ベッジ・パードン”を 交錯させ、これまで誰も出会ったことがない“新しい漱石”の物語が語られていくのでしょうか・・・。
 そして、漱石と言葉を超えて心を通わせる女性<ベッジ・パードン>には、この秋公開の三谷幸喜脚本・監督映画「ステキな金縛り」主演をはじめ、近年の三谷作品のミューズとも言える深津絵里。 舞台「春琴」や、多くの主演女優賞に輝いた映画「悪人」での凄烈な演技とは異なる「三谷ワールド」での表情に、舞台・映像共に期待が膨らみます。
 加えて、この2人を囲むロンドンの人々に扮するのは、大泉 洋、 浦井健治、 浅野和之 の巧者たち。
 今や“三谷ドラマ”にとって欠かせない存在でもある 『TEAM NACS』 大泉 洋 は、意外にも、所属劇団を離れての客演はこれが初めてという注目の登場です。
 また、ミュージカル界で圧倒的な人気を誇る 浦井健治 は、多くの演劇賞に輝いた「ヘンリー六世」(2009年)で、ストレートプレイでの実力は証明スミ。満を持して三谷作品への初出演を果たします。
 そして、2002年三谷幸喜作・演出「You are the top〜今宵の君は〜」に “緊急登板”して以来、三谷作品には縁が深い 浅野和之。 この度、第18回読売演劇大賞で、2度目の最優秀男優賞に輝くという偉業を達成したばかりの浅野は、この作品が受賞後初の舞台出演となります。 実に幅広い演劇ファンの"ツボ"をくすぐる布陣と言えるでしょう。

 珠玉のキャスト陣と三谷幸喜作・演出で描く、“のちの文豪”と“ベッジ・パードン”の物語にご期待ください!

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