シス・カンパニー公演 アルカディア
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2016年5月8日(日)に全公演の幕を下ろしました。
ご来場、誠にありがとうございました!
現在と過去が舞台上で巧みに交錯する斬新な劇作法で、劇作家サー・トム・ストッパードの最高傑作と賞賛を浴び続けてきた『アルカディア』。
舞台『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』、『コースト・オブ・ユートピア』、映画『恋におちたシェイクスピア』の脚本で、日本でも人気が高いストッパードが、1993年に英国ロイヤルナショナルシアターで発表。その初演直後から、日本でも多くのカンパニーが上演を望みながら、なかなか上演実現に至らず、日本では「憧れの戯曲」として長く語られてきた作品です。
 時空を自在に操りながら、巧みな言葉遊びから生まれる笑いと軽快なリズムに彩られた本作は、日本贔屓のストッパード本人も、日本での上演を強く望んできた特別な作品でもあります。
 この度、私たちシス・カンパニーでは、そのストッパードが大きな信頼を寄せる演出家:栗山民也、翻訳家:小田島恒志、そして、実力・人気共に演劇界のトップを走る強力なキャスト陣と共に、<世界が愛した傑作戯曲>の記念すべき日本初演を担うこととなりました!

−二つの世界が交錯する物語の背景−
物語の舞台は、英国の豪壮なカントリーハウス。この屋敷の中央に位置する居間で、19世紀の世界と、それから約200年後の現代が、時には交互に、時には複雑に交錯し合いながら進行していきます。同じ舞台上に存在しながら、実際には約200年を隔てた、一見何の関連もなさそうな二つの世界・・・。
片や19世紀の屋敷で暮らしていた貴族階級たちの生活ぶりや恋のかけ引きが描かれれば、片や現代の同じ屋敷に暮らす貴族の末裔たちと知識階級の人物たちの思惑が、リアルに描かれていきます。
 その中で、二つの世界を結ぶ「ある謎の追究」をめぐり、過去と現代の接点が徐々に浮かび上がり、本来は、決して交わることのない「過去と現代の人物たち」が、スリリングに相互に作用し合いながら、絶妙な美しいハーモニーを奏で始めるのです。
ストッパード特有のユーモアがもたらす笑いに彩られながら・・・。

−STORY−
著名な詩人バイロンも長逗留している、19世紀の英国の豪奢な貴族の屋敷。
その屋敷の令嬢トマシナ・カヴァリー(趣里)は、住み込みの家庭教師セプティマス・ホッジ(井上芳雄)に付いて勉強中の早熟な少女。しかし、天才的な頭脳の持ち主の彼女の旺盛な好奇心には、年上のセプティマスも歯が立たない。
あるとき、屋敷の庭園の手直し用の設計図に、トマシナは何の気なしにある書き込みをしてしまう。
その何気ない行動が、約200年後の世界に大きな波紋を広げていくとは・・・。
そして、約200年の時を経た現代。
同じカヴァリー家の屋敷の同じ居間に、過去の屋敷や庭園、とりわけバイロンにまつわる謎を熱心に調べるベスト・セラー作家ハンナ(寺島しのぶ)の姿があった。そこに、バイロン研究家のバーナード(堤真一)が加わり、ライバル同士の研究競争が過熱!その争いは、カヴァリー家の末裔ヴァレンタイン(浦井健治)、クロエ(初音映莉子)兄妹を巻き込み、やがて・・・。 
<ひとつの場所=同じ屋敷の同じ場所>を媒介として、繋がっていく二つの時代と人々。
それぞれの時代に生きる人々のドラマは、クライマックスへと加速度を増しながら展開していく。
19世紀のトマシナと家庭教師セプティマスの「歴史の中に消えていった過去」は、現代に復元されるのか?
現代の研究者バーナードとハンナを取り巻く人々の思惑、そして、2人が追究する真理への情熱は? 
−注目のキャスト陣は−
今回、二つの時代が交錯する舞台上で、多くの実力派キャストが<共演>を果たします。
同じ舞台上でひとつの劇空間を共に創りあげながら、設定上の時間は交わらない・・・・。
でも、二つ世界は明らかにつながりを見せてくる、、、、。 
この日本初演には、そんな複雑な世界観を体現するに相応しい顔ぶれが勢ぞろいしました。

数々の舞台で主役を務めきた珠玉の俳優陣が、この特別な舞台に集結し、どのようなハーモニーを奏でるのでしょう。
その12名の顔ぶれは・・・・
前作「才原警部の終わらない明日」で、驚きの<笑いと歌とダンス>で観客を喜ばせた
堤真一、
2015年出演の「禁断の裸体」での圧巻の演技力と存在感が強烈な印象として残る寺島しのぶ
ミュージカルのみならず、ストレートプレイ、映画、テレビドラマと幅広い活躍を見せる 
井上芳雄、
ミュージカルでの活躍はもちろん、2015年には読売演劇大賞最優秀男優賞に輝いた
浦井健治
最新主演舞台「僕のリヴァ・る」など、舞台をはじめ著しい成長が注目を浴びる
安西慎太郎
透明感あふれる存在感の中に、強い意志を秘めた眼差しで観る者を惹きつける 
趣里、
2013年公開のハリウッド映画「終戦のエンペラー」のヒロイン役で脚光を浴びた
初音映莉子

静かなたたずまいから発する独特の個性が、各作品で確かな存在感を残す
山中崇、
三谷幸喜作品のオーディションで見い出され、現在、大河ドラマ「真田丸」でも注目の
迫田孝也、
多くの蜷川幸雄演出作品を支え、シス・カンパニー公演でも活躍する大ベテラン・
塚本幸男、
シリアスからコミカルな役柄まで幅広い持ち味で演出家、共演者からの信頼も厚い
春海四方、
そして、数々の舞台での名演はもちろん、昨今では映像作品での活躍も顕著な神野三鈴
 
この12名の俳優陣が、二つの世界を通して、一つの劇空間を創り上げていきます。

 美しい物語、大胆かつ繊細な劇構造、そして、複雑な構造の中で向き合う登場人物たちに生命を吹き込むキャスト陣と演出家、翻訳家たち・・・。どれがひとつ欠けても成立し得ない演劇ならではの力に満ち溢れた世界です。
是非、ご期待ください!
現代最高の作家:トム・ストッパードとは
チェコスロバキアのユダヤ人家庭に生まれる。ユダヤ人迫害の懸念から幼い頃に国外に逃れ、シンガポール、インドと転居。そこで父と死別し、母親が英国陸軍少尉と再婚したのを機に、1946年英国へ移住した。17歳で学業を終え、地方の新聞社を経て、フリーのジャーナリストとして働きながら、テレビやラジオ劇を執筆。'67年にロンドンで初演された『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』が、現代演劇を代表する傑作として高い評価を獲得。翌'68年トニー賞を受賞し、その名声は高まった。その後も、『トラヴェスティーズ』、『リアル・シング』、『コースト・オブ・ユートピア』などでトニー賞を受賞。『アルカディア』はローレンス・オリヴィエ賞ベスト新作賞を受賞している。また、劇作のほか映画の脚本や翻訳・翻案作品も多数手がけており、 '98年には、『恋におちたシェイクスピア』でアカデミー賞脚本賞に輝いた。ストッパードの戯曲は、本作『アルカディア』にも見られるように、哲学的主題を扱う観念的なものという印象が強いが、実際には、巧妙な言葉遊びと明瞭なユーモアで、哲学的観念をエモーショナルに語るところに特徴がある。駄洒落、ジョークを組み合わせた複雑ながらリズミカルなせりふ回しや、『アルカディア』のように時空を平行させて物語を進行させたり、『リアル・シング』のように、劇中劇を多用し複雑さの中に真理を追究したりなど、知的な仕掛けに富んだ劇構造が特徴である。1997年、英国王室よりナイト爵に叙せられた。
<主な戯曲>
1966 ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ・・・・トニー賞最優秀作品賞、ロンドン演劇批評家協会賞最優秀作品賞
1968 ほんもののハウンド警部
1972 ジャンパーズ・・・・・・イヴニング・スタンダード最優秀作品賞、ロンドン演劇批評家協会賞際優秀作品賞
1974 戯れ歌 トラヴェスティーズ・・・・イヴニング・スタンダード最優秀コメディ賞、トニー賞最優秀作品賞
1982 ザ・リアル・シング・・・・イヴニング・スタンダード最優秀作品賞、トニー賞最優秀作品賞
1993 アルカディア・・・・・・・・ローレンス・オリヴィエ賞最優秀新作賞、イヴニング・スタンダード最優秀作品賞
                   批評家協会賞最優秀新作賞
1997 インヴェンジョン・オブ・ラブ・・・・イヴニング・スタンダード最優秀作品賞、ニューヨーク演劇批評家協会最優秀作品賞
2002 コースト・オブ・ユートピア・・・・・トニー賞最優秀作品賞
2006 ロックン・ロール
2015 ハード・プロブレム

<主な映画脚本(オリジナル+脚色)>
1985 未来世紀ブラジル(脚本)・・・・アカデミー賞脚本賞ノミネート
1987 太陽の帝国(脚色)
1990 ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ(脚本・監督)・・・・ヴェネツイア国際映画祭金獅子賞受賞
1990 ロシア・ハウス(脚色)
1991 ビリー・バスゲイト(脚色)
1998 恋に落ちたシェイクスピア(脚本)・・・アカデミー賞脚本賞受賞
2016 Tulip Fever チューリップ・フィーバー(脚色)
アルカディアという作品
1993年英国ロイヤル・ナショナルシアターにて、演出:トレバー・ナンの手により世界初演を果たす。
この初演で「現代」のバイロン研究家:バーナードを演じたのは、ハリウッド大作映画でも大人気の個性派俳優:ビル・ナイが演じ、そのライバルである研究者ハンナを、当時のストッパードのパートナーであった名女優フェリシティ・ケンドールが演じ評判を呼んだ。英国初演版は絶賛を浴び、演出:トレバー・ナン等、ローレンス・オリヴィエ賞のノミネートを多数獲得。作品自体は、同年のオリヴィエ賞ベスト新作賞を受賞している。
1995年には、同じくトレバー・ナン演出で、米国人俳優のキャスティングでブロードウェイに進出。現在、舞台のみならず映画やTVドラマでも人気が高いヴィクター・ガーバーがバーナード役を演じ、他には、当時はまだ無名に近かったビリー・クルダップ(映画「あの頃、ペニーレインで」「シャーロット・グレイ」「食べて、祈って、恋をして」等)が19世紀の家庭教師セプティマス役でブロードウェイデビューを飾っている。加えて、個性派実力俳優ポール・ジアマッティ(映画「サイドウェイ」等)、ロバート・ショーン・レナード(映画「今を生きる」TV「House」等)らが出演。この年のトニー賞最優秀作品賞のノミネーションを受けるという、高い評価を獲得している。
その後、英国、米国共に、多くの地方都市で上演が重ねられてきたが、2009年には、英国の人気演出家:デヴィッド・ルヴォ—演出で、ロンドン・ウェスト・エンドのデューク・オブ・ヨークス劇場にて上演され、この作品の価値が再認識されることとなった。この時、セプティマス・ホッジを演じたのが、翌年から始まったTVシリーズ「ダウントン・アビー」のマシュー役で一躍人気者となったダン・スティーヴンスだった。このプロダクションには、ストッパードの息子エド・ストッパードもヴァレンタイン役で出演し話題となった。このルヴォ—演出版は、2011年には、米国人キャスティングで、ブロードウェイでも上演された。
この時、バーナード役を演じたのは、初演時にセプティマス役でブロードウェイにデビューしたビリー・クルダップだった。
彼は、同年のトニー賞助演男優賞にノミネートされ、作品自体も、リバイバル作品賞のノミネートを受け、改めて、根強い人気と注目度が高いことを印象づけた。

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