シス・カンパニー公演 遊侠 沓掛時次郎 | |
SIS company inc. のプロデュース作品のご紹介 |
公演概要 | スケジュール | キャスト・スタッフ | HOME |
本公演は、10月2日(日)に閉幕いたしました。 浅野和之 体調不良による出演者変更で、皆様には多大なるご心配、 ご迷惑をおかけいたしましたこと、改めましてお詫び申し上げます。 千秋楽まで、変わらぬご声援を賜り、誠にありがとうございました! |
|
現代演劇史に輝く名作『寿歌』の作者・北村想とシス・カンパニーが、 近代日本文学へのリスペクトを込め、 オリジナル戯曲を発表するシリーズ『日本文学シアター』。 2013年、第1弾『グッドバイ』では、太宰治の未完の絶筆『グッド・バイ』をモチーフに、軽妙な中に透明感を湛えた「大人の青春物語」を発表し、その年の最も優れた新作戯曲に与えられる「鶴屋南北戯曲賞」を受賞。続く第2弾は、2015年に、夏目漱石の初期の名作『草枕』を骨格としつつ、漱石の物語の流れに、原作モデルの実在の女性から得たインスピレーションを大胆に加味した北村想版『草枕』を上演。ヒロインを演じた小泉今日子に、紀伊國屋演劇賞個人賞と読売演劇大賞優秀女優賞をもたらしました。
とある田舎町の神社の境内に、旅芸人一座の“長谷川團十郎一座”がやってきた。 「お芝居」が観たいっ、と、つよ〜く思う今日この頃。〈芝居〉というのは古の観客席のことです。
昭和3年(1928)、「騒人」に掲載された三幕十場の戯曲。長谷川伸の出世作であり、"股旅もの"の傑作。新国劇をはじめとする舞台、映画、テレビドラマ、歌謡曲、浪曲と様々なジャンルで取り上げられ、最近では漫画にも描かれ、長年日本人に愛されてきた作品です。長谷川伸自身が作詞した「沓掛小唄」という歌謡曲も存在しています。特に、昭和期は、多くの「銀幕スター」によって映画化されており、大河内伝次郎、長谷川一夫、市川雷蔵、中村錦之助が演じ、また、TVドラマでも、鶴田浩二、島田正吾、仲代達矢、大川橋蔵が登場。これらの映像作品には、大胆な脚色も施されてはいますが、そのいずれのジャンルに共通するのは、股旅者へ寄せた強い共感や憐憫の情でしょうか。
さて、本作の舞台で、「長谷川團十郎一座」によって演じられるオリジナルの物語は・・・。 さて、いよいよおきぬの出産が近づき、金が必要になった時次郎は・・・。 この続きは、「長谷川團十郎一座」の熱演でお楽しみいただくとして、ここに流れるのは、静かに人を思いやる美しさです。貧しい人間がいたわり合い、身を寄せて生きていく姿の健気さ、心を寄せ合うようになりながら、義理を通し、指一本触れようとしない純愛の姿は、現代には「天然記念物」かもしれませんが、私欲にまみれた現代には、崇高な輝きさえ感じらます。任侠の是非はともかく、"義理と人情"に支えられてきた旧き日本人の心の源泉に触れられる作品だと言えるでしょう。この物語が、北村想の発想で、どのような進展を遂げるのか、篤とお楽しみくださいませ。
明治17年(1884)3月15日、横浜市日ノ出町に生まれる。3才のときに、実母が家を出る。その後、一家は離散。小学校2年生で中退し、出前の小僧や土方、石工など辛酸の限りをなめたという。しばらく出前持ちをしていたときの得意先であった遊女屋、日当稼ぎで喧嘩の助っ人をしていたときの鉄火場潜りなど、後に「股旅もの」というジャンルを確立し、人気を呼んだ彼の小説のバックボーンは、このリアルな実体験によるものだった。20歳で、横浜毎朝新報に入社。その後、都新聞(現・東京新聞)に転じ、大正13年(1924)に出版した『夜もすがら検校』で芥川龍之介に、サンデー毎日に書き下ろした『天正殺人鬼』で菊池寛にも認められ、"長谷川 伸"を名乗るようになった。以後、『沓掛時次郎』、『関の弥太っぺ』、『一本刀土俵入』などの戯曲や、『紅蝙蝠』 などで豊かな大衆文芸の世界を生み出す。シス・カンパニーで2008年に上演した『瞼の母』は、母への思慕を投影した作品として有名。
さて、作者:北村想の構想を体現すべく集まったのは、まさしく「演劇職人」とも言うべき顔ぶれに、期待の若手俳優を加えた「一座」の面々です。また、長谷川 伸の、もうひとつの功績が歴史小説家としての顔である。長谷川は、世の中に忘れ去られて久しい年代記の発掘に心血を注ぎ、日本の一般大衆の心にある真の美徳やヒュ−マニズムをその中に描こうとした。その史伝の秀作『日本捕虜志』で、第4回菊池寛賞を受賞している。 まずは、その筆頭に名を連ねるのは、第1弾『グッドバイ』、第2弾『草枕』に続いての登場の段田安則。 前2作で、「初老教授のラブロマンス」、「芸術を追求しながら旅する画工」と、ある意味、作者:北村想の分身とも言える姿を担ってきた段田に、三度目の本作で、作者がどのような美学を託すのか、注目いただきたいポイントです。 そして、近作『コペンハーゲン』での、段田との白熱の演技バトルが話題を呼んでいる浅野和之が、客演で一座に加わるワケあり風の役者として、前作『草枕』に続いての北村作品への参加を果たします。加えて、鈴木浩介、西尾まりが、一座の中堅役者として登場。鈴木は、本年、鈴木おさむ作・演出のダーク・ファンタジー的な二人芝居『美幸』での熱演が話題になったばかり。そして、西尾は、最新出演舞台である栗山民也演出『あわれ彼女は娼婦』でも安定した存在感を放っています。 また、朗読公演以外の舞台では、意外にも、初めてのシス・カンパニー公演出演となる戸田恵子が、一座を支える座長夫人役を演じます。これまで舞台上で数多くの女性像を表現し、役者仲間からの信頼を一身に集めてきた戸田は、物語同様、この”遊侠 沓掛時次郎一座”の要となることは間違いありません。 そして、座長・長谷川團十郎を演じるのは、初舞台から50年以上を数える文学座の重鎮にして、新劇から小劇場系作品まで、軽妙さと重厚さを併せ持つ魅力で駆け抜けてきた金内喜久夫大先輩が登場します。 これらの演劇職人とも言うべき充実の顔ぶれに、注目の新鋭:渡部秀、萩原みのりが加わり、物語に新しい風を吹き込む役割を担います。最近では、情報番組にも挑戦している渡部は、松尾スズキ翻訳絵本の舞台化『ボクの穴、彼の穴。』で、初めての二人芝居を経験したばかり。また、ドラマ『表参道高校合唱部!』をはじめ、そのフレッシュな息吹を映像に焼き付けてきた萩原は、本作冒頭の「おひけぇなすって!」の台詞で、いよいよの初舞台に挑みます。この新鋭二人からも目が離せません。 演出は、北村想の信頼も厚く、シリーズ前2作での、優しさと懐かしさの中に、シャープで斬新な発想で切り込む寺十 吾が担当。シリーズを通した「世界観」の提示にも、ご注目いただきたいと思います。 本作は、モチーフである本家『沓掛時次郎』(くつかけときじろう)のタイトルに、『遊侠』(=仁義を重んじ、強きをくじき、弱きを助ける意)を加えた、北村想 渾身のオリジナル作品です。この期間の小劇場は、どこか郷愁も漂う<旅芸人の芝居小屋>へと姿を変え、一座に集まる役者たちの謎の素性も伏線となって絡み合い、意外な結末へと物語は転がり出していきます。 これぞ、北村想ならではの幾重にも巡らされた作劇の妙! 近代日本文学が残した大衆文学の玉手箱を開いてみたら、そこから何が飛び出してくるのやら?? 今宵、シス・カンパニーがお届けする 日本文学シアターVol.3 【長谷川伸】 『遊侠 沓掛時次郎』(ゆうきょう くつかけのときじろう)。 熟練の役者たちと期待の若手俳優たちが躍動しながら、繰り広げられるワクワクするひとときをお楽しみください。 浅野和之 体調不良による出演者変更のお知らせとお詫び 2016/08/27更新 |
[ お問い合わせ ] |