シス・カンパニー公演 風博士
SIS company inc. のプロデュース作品のご紹介


本公演は、2020年1月13日(月祝)公演をもちまして、全ステージの幕を下ろしました。
皆様、応援ありがとうございました。
 太宰治、夏目漱石、長谷川伸、能「黒塚」、江戸川乱歩、、、と、さまざまな日本文学から新たな劇世界を創出してきた「日本文学シアター」シリーズも本作で第6弾!
北村想の自在な発想の翼は、昭和が生んだ無頼の作家・坂口安吾の世界へと羽ばたきます。
さてさて、晴れやかな青空の下、一体、何が待っているのでしょうか?
それでは、これからお話していきましょう。。。。

本公演「風博士」は、その題名の通り、坂口安吾が文壇に認められるきっかけになったという短編小説「風博士」がインスピレーションの始まりです。
坂口安吾作「風博士」と言えば、一陣の風となって姿を消した不思議な博士の謎が語られたシュールでナンセンスな小品です。
おそらく、本公演の上演速報を見て、すでに本家「風博士」をお読みになった熱心な皆さんもいらっしゃるでしょう。
そして、風変わりな風博士とライバル蛸博士の戦いの話と、発表されたキャスト名を見比べながら、頭の中が疑問符だらけになられた方も多いのではないでしょうか。

でも、その“狐につままれた感”もまさに安吾へのリスペクト!
その本家の「風」を身にまといながら、安吾の代表作『白痴』など他作品のモチーフも織り込み、風の吹くまま気の向くままにイメージを広げて紡いだのが本戯曲なのです。 北村想曰く、

『「風博士」で安吾、ということで、原作をご存知の方は、あの小説(物語)をどんな舞台にするんだろうとワクワクしたり、首を傾げたりされたことでしょう。
けれども、私の「風博士」は、原作とはかなりチガウ「風の博士」です。「風を読む科学者」のハナシです。
彼は興に及んで歌なんて歌います。』

本作の設定は、敗色濃厚となった戦時下の大陸が舞台です。
そこでは、風を読むことができるというフーさんと呼ばれる男と彼のもとに集まる人々が、迫りくる過酷な現実の中で日々を生き抜いています。
とご紹介すると、「ああ、悲惨な戦争モノか…」と思われるかもしれませんが、フーさんの周りに集まるのは、兵隊サンも含めて、風の如くそよそよと生きてきた人々たちです。
元は何やらわけあって大陸まで渡ってきたのでしょうが、フーさんを中心に、あるときはミステリアスに、あるときはユーモラスに、あるときはノスタルジックに、大陸のどこまでも青い空の下で、彼らそれぞれの人生や秘密が交錯していきます。

出演は、主演映画『記憶にございません!』で話題沸騰の中井貴一が、主人公の「風博士」ことフーさん役でシリーズ初登場を果たします。
2018年出演のミュージカル「日本の歴史」で卓越した表現力に裏打ちされた見事な歌声で世界観を創り上げた中井貴一が、本作でも、どのように物語を牽引してくれるのか楽しみは尽きません。
そして、シリーズ開始から連続3作の主演を務めた段田安則が久々にシリーズに復帰!
本年も2作の翻訳劇で硬軟両面の魅力を見せてきた段田が、「北村想の世界」にまた新たな風を吹き込んでくれることでしょう。
加えて、鬼婆伝説をモチーフにした第4弾「黒塚家の娘」で妖しげな母娘を演じ、終盤の展開で観客の度肝を抜いた渡辺えり趣里が、それぞれ前作とはガラリと異なる役柄で私たちを驚かせてくれます。
劇作家協会会長としても活躍する「永遠の演劇少女」渡辺は、脚本・演出・出演と大活躍した新作「私の恋人」を大盛況のうちに終えたばかり。
趣里も、その演技力が注目を高めている中、今年も『クラッシャー女中』、ギリシャ悲劇『オレステイア』などのタイプの異なる舞台作品で着実に足跡を刻んでいます。
また、第3弾「遊侠 沓掛時次郎」で闇世界に生きる男を演じ渋い魅力を見せてくれた松澤一之も2作目の北村想×寺十吾演出作への登場です。
それぞれが「日本文学シアター」の空気感を経験しつつも、また新たな作品で、どのような向き合い方を見せてくれるのか興味深い顔合わせです。
そして、現在、多方面で大活躍の吉田羊林遣都の二人が中井貴一と共に、初めて「日本文学シアター」に登場することも大きな話題です。
吉田羊といえば、この夏、福田雄一演出の爆笑コメディ『恋のヴェネチア狂騒曲』で颯爽と舞台上を闊歩する姿でファンの心を掴んだばかり。
今回の宣伝写真で、しっとりとした着物姿で青空を見上げる表情には、どのような秘密が隠されているのでしょうか。。。
同じく宣伝写真で真っ直ぐな瞳で青空を見上げる林遣都も、映像での大活躍はもちろん、本年は舞台『熱帯樹』で三島由紀夫作・小川絵梨子演出作品に挑み評判を呼んだばかり。
舞台にも真摯に向き合う姿勢と宣伝写真での真っ直ぐな視線が重なります。
加えて、シス・カンパニー公演『近松心中物語』に出演した内藤裕志大久保祥太郎もシリーズには初参加。

総勢9名の大陸で生き抜く人々が、中井“フーさん”を中心に、どのように坂口安吾テイストが香る新世界を作っていくのか、、、
その顔ぶれの豪華さ以上に、新しく広がる劇世界への興味は増すばかりです。

演出は、これまでシリーズ全作品演出を担い、北村想と並びシリーズの顔でもある(じつ)(なし)(さとる)がもちろんの続投!
北村戯曲のレトロな叙情感を大切にしながら、エンターテインメント性も大胆に加味し、独自の世界観を表現する手腕は高く評価されてきました。
本作では、その寺十アプローチに新たな注目ポイントが加わりました。
これまで、小劇場空間ならではの濃密な舞台づくりがシリーズの特徴のひとつでしたが、本公演は、東京:世田谷パブリックシアター、大阪:森ノ宮ピロティホールへと劇場空間が広がりました。演出:寺十吾の空間づくりにもご注目ください。
そして、空間以外にも、大きな注目ポイントが……。それは、音楽です。
音楽:坂本弘道は、これまでも物語を彩る印象的なメロディを提供してきてくれましたが、本作ではより重要なパートを担うこととなりました。
人は嬉しくても悲しくても、それが鼻歌であっても、朗々とした歌声であっても歌を口ずさみます。
坂口安吾も歌を好んだようですし、我らが作者:北村想も昔はギターの弾き語りもやっていたとか。。。
本公演は、ミュージカルとも音楽劇とも銘打ってはいませんが、本作では、“まるで喋るがごとく歌い、歌うがごとく喋る”ように、 “歌”が自然に盛り込まれています。 
果てしなく広がる大陸の青空に流れる歌声・・・。 是非、劇場でお楽しみください!
2012年に北村想の名作「寿歌」をシス・カンパニープロデュースで上演した際、近代日本文学へのリスペクトを込め、名作戯曲や文学作品、作家をモチーフに新作を生みだそうという構想が、北村想とSISプロデューサー北村明子の間で立ち上がり、翌13年にシリーズスタートが早くも実現した。
和歌・連歌の手法に、古歌の語句や趣向を取り入れて新しい表現を用いて歌を詠む「本歌取り」という技法があるが、まさに現代戯曲における「本歌取り」と言える斬新なアプローチがその特徴。当初はシリーズ3作で完結予定の“短期決戦企画”であったが高い評価と人気を獲得。その声に後押しされ、4作以降のシリーズ継続が決定した。
シリーズ4作目「黒塚家の娘」からは、近代文学という枠組みにとらわれず、「能」の世界を「本歌」としてセレクト。
現在では、日本文学全般へのリスペクトを表現する、シス・カンパニー公演の定着した人気シリーズとなっている。
演出は、寺十吾(じつなし・さとる)が担当。北村想の世界観を熟知した演出には定評がある。

【1】 日本文学シアターVol.1【太宰治】 『グッドバイ』 
出演:段田安則・蒼井優・柄本佑・半海一晃・山崎ハコ・高橋克実
2013年11月29日(金)〜12月28日(土)  シアタートラム

○太宰治の未完の絶筆『グッド・バイ』をモチーフに、段田安則と蒼井優の不思議なラブロマンスが物語の中心。軽妙な中に透明感を湛えた「大人の青春物語」と評判を呼び、その年の最も優れた新作戯曲に贈られる「第17回鶴屋南北戯曲賞」に輝いた。
【2】 日本文学シアターVol.2【夏目漱石】 『草枕』 
出演:段田安則・小泉今日子・春海四方・山田悠介・浅野和之
2015年6月5日(金)〜7月5日(日) シアタートラム

○夏目漱石の初期の名作『草枕』の流れに、原作モデルとなった実在の女性から得たインスピレーションを大胆に加味。ヒロイン:小泉今日子に、初の演劇賞となった「第50回紀伊國屋演劇賞個人賞」と「第23回読売演劇大賞優秀女優賞」をもたらした。
【3】 日本文学シアターVol.3【長谷川伸】 『遊侠 沓掛時次郎』 
出演:段田安則・鈴木浩介・渡部秀・西尾まり・萩原みのり・戸田恵子・金内喜久夫
寺十吾(〜9/15まで)・松澤一之(9/16〜)
2016年 8月27日(土)〜10月2日(日) 新国立劇場小劇場

○第3弾は、大衆演劇の巨星:長谷川伸の人気作「沓掛時次郎」 にアプローチ!“血沸き肉躍る“いわゆる“股旅モノ”の代表作をモチーフに、旅芸人一座「長谷川團十郎一座」が劇中劇で演じる「沓掛時次郎」の義理と人情の世界と、現実の旅役者たちの舞台裏とがスリリングに交錯。心も湧き立つエンタテインメント要素にも彩られた「大人のおとぎ話」と絶賛された。
【4】 日本文学シアターVol.4【能「黒塚」より】  『黒塚家の娘』 
出演:風間俊介・趣里・高橋克実・渡辺えり
2017年5月12日(金)〜6月11日(日) シアタートラム

○当初、<段田安則主演3作をもって完結>予定だった本企画が、好評の声に支えられシリーズ継続が決定。それまでの「近代文学」の枠を飛び越え、一気に室町の世までさかのぼり、「安達ケ原の鬼婆伝説」がベースの能「黒塚」がモチーフに!奇々怪々で、オモシロ怖い“北村想版ファンタジーホラー”が誕生した。
【5】 日本文学シアターVol.5【江戸川乱歩】  『お蘭、登場』 
出演:小泉今日子・高橋克実・堤真一
2018年6月16日(土)〜7月16日(月・祝) 東京:シアタートラム
2018年7月19日(木)〜7月26日(木) 大阪:サンケイホールブリーゼ

○第2作「草枕」で自身にとって初の演劇賞を獲得した小泉今日子がシリーズ再降臨!シリーズ初の大阪公演も実現した。
大正から昭和にかけて活躍した日本ミステリー界の祖=江戸川乱歩にアプローチした本作は、乱歩特有のエンタテインメント性を、北村想が軽やかに鮮やかにめくるめく迷宮世界へと紡ぎあげた。影のテーマとして「冤罪」をも盛り込んだ巧妙な劇作術も光った。

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シス・カンパニー 03-5423-5906
(平日11:00〜19:00)
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