シス・カンパニー公演 わたしの耳/あなたの目
SIS company inc. のプロデュース作品のご紹介
この3月以降、多くの舞台公演が中止や延期を余儀なくされ、私たちにとって、とてもツライ時期が続きましたが、
遂にシス・カンパニー公演も再び動き始めました!
もちろん新型コロナウイルス感染予防対策も万全に施し、皆様を劇場にお迎えする準備も着々と進行中です。
そして、オンラインライブ配信でもお楽しみいただけるよう、私たちにとって初めての取り組みにも乗り出しました。
まだまだ予断を許さぬ、未曾有の状況下ではありますが、
再び演劇に向き合える喜びを胸に、一歩一歩進んで参りたいと思います。

 さて、この度、上演する作品は、「ピサロ」「エクウス」「アマデウス」の作者としても有名な英国の劇作家<ピーター・シェーファーが、
1962年5月に初演し人気を博した2作の男女3人芝居です。
「わたしの耳」「あなたの目」という対照的なタイトルが何を暗示しているのでしょう・・・。
「耳」から入る話がすべてなのか、「目」で見たコトこそが本物なのか。
人間同士の心の距離やその取り方の面白さを対照的な2本の物語に織り込んで、
ちょっとくすぐったいような軽やかな笑いと共にお届けするお洒落な2本の物語です。

 まず先陣を切るのは9月9日(水)に開幕の「わたしの耳(原題:The Private Ear)です。
出演は、英国演劇留学からの帰国後初の舞台に挑むウエンツ瑛士
多くの舞台や映像作品でその実力を高く評価されている趣里
お笑いコンビ「かもめんたる」のメンバーであり、「劇団かもめんたる」で演劇活動も積極的に展開している岩崎う大が登場!
ロンドンの中心地から少し離れた下町にある屋根裏部屋を舞台に、
男女3人が過ごすある夜の出来事をマギーの演出で描き出します。
 
 続いて、9月22日(火祝)から始まる2作目「あなたの目(原題:The Public Eye)には、
小林聡美
八嶋智人野間口徹の手練れのベテラン勢が登場!
すでに丁々発止の台詞のやり取りが聞こえてくるような顔ぶれですが、
舞台は、ロンドン中心部の閑静な地域にある会計事務所の一室。ある女性の行動を探る風変わりな探偵と、
妻であるその女性の尾行を探偵に依頼した夫の3人が繰り広げる駆け引きを描いたお話です。
ミア・ファロー主演の映画「フォロー・ミー」の原作としても知られる本作を、
シス・カンパニー公演の人気シリーズ「日本文学シアター」演出でおなじみの寺十吾の演出でお届けします。

 それぞれ1作単独でも完璧に成立する戯曲ですが
、「耳」と「目」両作品をご覧いただくことで、男女関係の機微のみならず、
人間関係の距離感の妙を2倍堪能し、2倍深めることができる楽しい仕掛けです!

 シス・カンパニー公演 『わたしの耳』『あなたの目』2作連続上演 是非、ご期待ください。

「わたしの耳(The Private Ear)」「あなたの目(The Public Eye)という戯曲

「耳」と「目」という、人間の「器官」をそれぞれのタイトルにもち、「一対」の響きをもった2作品が、ロンドン・グローブ座で初演を迎えたのは1962年5月のことでした。2001年に「サー」の称号を得る英国を代表する劇作家ピーター・シェーファーが、30代半ばの若き日に書き下ろした2連作です。
1960年代のロンドンと言えば、のちに「スウィンギング・ロンドン/スウィンギング・60's」と形容されたように、ファッション、音楽、映画などを通し、若者のストリートカルチャーが古くからの階級制度に縛られた価値観を大きく揺さぶった時代です。しかし、本作初演の1962年5月は、まだ「ビートルズ」や「ローリング・ストーンズ」もレコードデビューを果たしておらず、「ミニ・スカート」の世界的流行までも「あと少し」…。しかし、戯曲誕生時の背景は、古くからの階級制度と現実社会とのギャップや世代間の歪みが増し、新たなカルチャーへのうねりが加速していた「エネルギーの爆発前夜」だったと言えるでしょう。
 この2連作の第一章とも言うべき『わたしの耳 The Private Ear』は、ひとりの内気で夢見がち青年の"受難"を、スピーディなセリフの応酬とクラシック音楽を絡め、乾いた笑いで描いた作品です。彼の人間関係の距離感の取り方の恥ずかしいくらいの痛々しさと言ったら…。1960年代のロンドンであろうが、現代の日本であろうが全く関係なく、この物語には、ほろ苦い乾いた笑いと共に、どこか懐かしい感傷がこみ上げ、愛おしさを感じてしまう、、、そんな作品です。
 そして、第二章『あなたの目 The Public Eye』は、執筆当時の根強い階級制度にシニカルな視線を注いだ作品ではあるのですが、敢えて扇情的に盛り込まず、まるでロンドン観光を共に楽しんでいるかのような名所の描写をちりばめながら、極上のロマンチック・コメディとして、人間の距離感の面白さを際立たせていきます。この戯曲は、お洒落でありながらエッジが効いたセリフ劇ですが、「階級」や「既成概念」に捉われた人間と自由な人間との向き合い方や距離の取り方に、大いなる希望を抱きたくなる、これもまた、登場人物たちが愛おしく感じられる作品です。

ピーター・シェーファー Peter Shaffer(1926-2016)

英国リバプールの裕福なユダヤ人家庭に誕生。5分違いで生まれた兄は、戯曲「探偵スルース」や多くの映画脚本を執筆したアンソニー・シェーファーである。
ケンブリッジ・トリニティ・カレッジを卒業後、炭鉱夫、本屋の店員、ニューヨークに渡り、ニューヨーク公立図書館員、ロンドンに戻り、音楽出版社勤務など、多くの職業を経験。1955年、BBC『The Salt Land(塩の地)』などいくつかのテレビドラマを発表。1958年に戯曲『Five Finger Exercise(五重奏)』がウエスト・エンドで上演され大成功を獲得。同年のイブニング・スタンダード賞を受賞。以降、本作『The Private Ear/The Public Eye(わたしの耳/あなたの目)』を始め、次々と戯曲を発表。73年『Equus(エクウス)』では2度目のニューヨーク劇評家賞を獲得。映画化に際し脚本を担当し、アカデミー賞脚本賞にノミネート。79年ロンドン初演『Amadeusu(アマデウス)』は世界的大ヒットを記録。イアン・マッケラン=サリエリ、ティム・カリー=モーツアルト のキャスティングで上演されたブロードウェイ版で、トニー賞最優秀作品賞を受賞。1984年の映画化の際には自ら脚本を手掛け、アカデミー作品賞・脚本賞に輝く。その他の代表作は、『The Royal Hunt of the Sun(ピサロ)』、『Black Comedy(ブラック・コメディ)』、『Lettice and Lovage(レティスとラベッジ)』など日本でも人気が高い作品がある。

「わたしの耳」STORY

内気な青年ボブ(ウエンツ瑛士)の至福の時間は、狭くみすぼらしい屋根裏部屋には似つかわしくないオーディオセットでクラシックレコードを聴くこと。
ある日、クラシックコンサートで隣に座った女性ドリーン(趣里)に一目ぼれ。勇気を出して、自宅のディナーに招待するまで漕ぎつけた。まさに一世一代の大勝負なのだが、女性に不慣れなボブは、明るく経験豊富な会社の先輩テッド(岩崎う大)に助けを求め、助っ人として料理とホスト役を担当してもらうことに…。
ディナーの準備を進めるボブとテッドだったが、そこに、いよいよ可愛らしくお洒落をしたドリーンがやって来た。
たどたどしいながらもぎこちなく会話を続けるボブ。饒舌になるのは、自分が愛してやまないクラシック音楽の一方的な話題のみ。そんな中、テッドが持ち前の社交性でその場を盛り上げるのだが。。。
屋根裏のアパートの一室で、男女3人に起きる一夜の出来事とは…?

「あなたの目」STORY

ロンドンの閑静な地区に立派な会計事務所を構えるチャールズ(野間口徹)
絵に描いたような中産階級出身のお堅い彼のもとに、ちょっと風変わりな男が訪ねてきた。
いぶかしがるチャールズに、回りくどく訪問の目的を話し出すこの男ジュリアン(八嶋智人)は、実は探偵。
しかも、チャールズ当人が、自由奔放な妻ベリンダ(小林聡美)の素行を疑い、昼間の尾行調査を依頼した探偵事務所の調査員だったのだ。ここ1か月間のベリンダの行動調査の結果を、これまた回りくどく説明するジュリアンに苛立つチャールズ。ジュリアンによれば、ベリンダは不貞こそ働いていないが、毎日あてもなく、ロンドンの街を歩き回っていて、行く先々で、静かに微笑みを交わし合う男の存在があるという…。
そこに突然、ベリンダが会計事務所に現れた!そして、つい数週間前から、言葉も交わしたこともないある男との出会いによって「生き返る」ような思いをすることができたと話し始めた・・・。
夫婦の関係に第三者が現れたことで明らかになる人間関係の真実とは?

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